ふと、QualcommのSnapdragonのスペック紹介ページを見てて、S8Gen1とS8+Gen1のモデルナンバーが違っていることに気づきました。S8Gen1がSM8450、S8+Gen1がSM8475なんですよね。つまり、今回の「Plus」は全く別物として存在することになったということを意味しています。
例えば、おなじみS865、S865+、S870はそれぞれSM8250、SM8250-AB、SM8250-ACと、S800から続く伝統のモデルナンバーとしており、全てS865をベースにして改良されているというわけです。(ちなみに、S865+とS870では、通信周りの性能面で負けず劣らずの面があるため、必ずしもS870が優位ではない)
まあ、おおむね予想されている通り、S8Gen1は冷却機構がうまく作られていない限り、ピークパフォーマンスを維持するのは非常に難しいSoCです。まあ、これはiPhoneとか、最近のスマホ界隈では変わらないとは思うのですが、S8+Gen1のモデルナンバーが違っているということは、別のSoCとして出荷するだけのスペックアップをしているというわけで、それこそ、TSMCに製造が変わったとしても、そこでパフォーマンスをアップさせてしまったら、結局はS8Gen1と同じ失敗をしないかと考えてしまうのですよね。
去年、と言うよりは今年に入って思ったことですけど、S888はどうも厄介なSoCだなとRM6Rを使ってて思いました。他を知らないのでなんともいい難いのですが、少なくとも、S865を搭載したXPERIA 5 IIより、発熱はひどく、バッテリーの持ちもどんどん悪くなっていったからです。
さて、S865以前とS888以降において、大きく異なっている点が2点あります。1点はbig.littleコアの考え方にPrimeコアを付け加えたこと、S865世代においても、特定コアのクロックのみ跳ね上がるという機能はありましたが、1コアのみのクロックを上げ、ピークパフォーマンス性能を稼ぎ出そうとした考え方でした。実際に突出したクロックが出るコアの状態を見ることはまれですが、そういう動作をします。稼げて数%ぐらいはパフォーマンスが上がるのかもしれません。
大してS888以降では、別途Primeコア、bigコア、littleコアを用意し、すべてのコアでピークパフォーマンス性能を叩き出すようなスタイルです。これはトータルパフォーマンスが上がるものの、ダイにうまく配置出来たとしても、Primeコアのクロックは必要とあらば即全開となるため、制御は非常にピーキーになると思われます。S888の搭載スマホが200gを超えているモデルが多いのも、そのコア設計に対する発熱対策と考えていいんじゃないかと思います。現に、XPERIA IIIシリーズはその辺に未だに苦しんでいますし、1 IVも同様の問題を抱えています。
もう一点はS865では外部接続だった5GモデムをSoCに搭載したことです。5Gにかぎらず、4Gまでの通信も行うわけですけど、S865ではモデム部分とSoC部分で別途冷却機構を用意することが出来たものが、すべてSoCに一体化してしまったわけです。5Gモデムを内蔵出来なかったゆえの偶然なのかもしれませんが、S865はそういう意味でバランスのいいSoCです。対してS888以降では、これは排熱対策をどんなに頑張っても、それこそシロッコファンを付けて強制排気でもしない限りは難しいだろうという結論にも行くだろうなあと思ったりします。
こうやって見てると、なんとなくS810を思い出させるんですよね。アレはフルに使える環境が現在のスマホサイズぐらいあって、初めてバランスが保てるSoCだったんだろうと思うんですよね。何台かS810を使った人間として、LeTV MAXとXPERIA Z4 Tabではしっかり熱ダレも起こさずに動いていましたから、もともとスマホに適していない設計だったと思うんです。SamsungがExynosに逃げたぐらいでしたからね。
対して、基本は6.5インチぐらいに大型化した現在のスマホにおいて、更に強力な冷却機構を必要とするという点で、S888以降のSnapdragon8シリーズは、そもそも基礎設計に無理があるんじゃないかと思うんですよね。だから200gが標準。235gもあるRM7Pがある意味お飾りだけの冷却機構じゃないと証明できちゃうほどです。
今後のSnapdragon 8 Gen2はなんとPrime,Performance-A,Performance-B,Economyの4種類のコアがシュリンクされるとの話も出ています。ただ、このコア設計で、現状の冷却機構を更に強化していこうと考えた場合、そろそろ250gをオーバーするような物々しいスマホが登場する一方、GALAXY S22やXPERIA 5に代表されるコンパクトハイエンドモデルは、リミッター付きで設計せざるをえない状況になってしまいそうです。あるいはこのジャンルは終了となるか。二択でしょうね。
歴史にたらればを付けて話すのはどうもおかしいかなと思いますが、もし、S888がTSMCが製造して、果たして同じように爆熱にならなかったか、S8 Gen1を製造していたら、熱問題はクリア出来たか?僕には、どこで作っても同じような気がします。なんで、こんなに無理やりなコア設計にしちゃってるんだろうなあって。
面白そうだから、S870あたりをまたメインストリームに戻してくればいいのにねと思ったりします。まあ、今更でしょうけどね。
おしまい