昔と言って、まさか10年も前の話だったのかと驚く。
日本のスマホがこぞってハイエンドSoCしか使わない時代がありました。Snapdragon 800の時代。XPERIA Z Ultraが初搭載した、XPERIA史上、おそらく一番輝いていたのが、Z~Z Ultra~Z3ぐらいまでの時代でした。
そんなS800と、S4Proの間をつなぐ役割を持ったSoCが、今回のテーマ、Snapdragon 600の話です。
言わずもがな、現在ではミドルエンドの型番である、S600シリーズ。今とは違い、スマホの体感に対してダイレクトに反応が悪いというS615やS617、多少なりとも性能アップしたS625やS630、飛躍的性能アップでミドルエンドに君臨したS650/S652シリーズ、そしてグラフィック能力も向上したS660/670を経て、現在の690/695、S6Gen1へと進化してきました。
さて、その中で、S600シリーズの元祖でありながら、本来の立ち位置であるミドルエンドではなく、ハイエンドに君臨したのが、Snapdragon 600というSoCです。なんでそうなったのか?
まずひとつに、S800と同時にリリースされたものの、当時はSONYに優先的にS800を流通させたと言われていて、仕方なしにスマホメーカーはS600を使う必要があったということ。さらに日本独特の習慣というか、季節ごとにキャリアはラインナップを更新していた時代でした。このS600を搭載していた代表的なスマホとして、GALAXY S4(日本版)、HTC One、SH-06E、F-06Eなどです。この時、SONYはS600を割り当ててもらえず、XPERIA ZRの派生モデルであるXPERIA Aを発表しています。伝説の初音ミクモデルはこのスマホ。当然1世代前のS4Proを搭載していました。また、LG Optimus it、NEC MEDIAS X、Panasonic ELUGA PなどもS600を搭載していました。この時代、スマホのスペックはほぼ横一線で、如何にユニークな機能を付けるか?という点に重視されていた時代でした。ワンセグが息巻いてたころですね。
あとは、S4ProとSoCの構成があまり変わらず、CPU部のクロックが若干上がっただけのマイナーチェンジであったことなどが、印象の薄いものにつながっていったのかなと思います。でも、モデルナンバーに対して、絶対的にハイエンド構成だったS600を、S800と同時にリリースしたこと。そして、思った以上にS800が出てこなかったことで、仕方なしに採用したメーカーが多かったという感じだと思います。
ハイエンドSoCだけあって、ベンチマークスコアだけであれば、S652あたりとほぼ同等。実際のゲームをプレイすると、案外遅くはない感じはあったものの、S4Proと大差はなかったと記憶しています。もっとも、後年にリリースされているS630以上の地力の強さもあり、見劣りはしなかったとは思っています。(S630って2020年ぐらいまで採用されてたSoCです)
その後、供給が安定してきたS800は、各メーカーでも採用され始め、GALAXY Note3をはじめ、ARROWS Z、AQUOS ZETA、XPERIA Z1などが搭載されます。これを同じ年にやっているんです。
2013年の初頭には、S4Pro搭載のXPERIA Zが絶賛され、夏頃には世界最速でXPERIA Z UltraでS800を搭載、それを現行のZシリーズに統合したXPERIA Z1。これだけのハイエンドモデルが1年で登場するというのは、まれな出来事だったと思います。
今だったら、S8Gen3登場後にも、S8Gen1やS8Gen2を作り続けている(のか、在庫が捌けないのか)ので、その当時は、S800登場後もS600を並行展開していく予定だったのかもしれないです。当時のミドルエンドSoCとしてはかなり性能が高いSoCなので、今でいうSnapdragon 7シリーズに近い立ち位置になれたのかなと思います。ただ、その後のSnapdragon 600シリーズを見ると、当時はそれほど性能は振るわず、S400シリーズとそれほど立ち位置は変わらなかった感じがあったものの、S660あたりから本格的にミドルエンドという立場を明確化し、その後はS700シリーズへと進化し、ミドルローエンド(どうでもいいですけど、この訳わからんクラスの名称はおかしい)の立場として、S690あたりからは、完全にミドルエンドとして十分過ぎる性能を有することになります。果たして、当初のS600シリーズの狙いがどうだったのか、それは、Qualcommのみが知るところです。
さて、僕はというと、この頃には当然のようにXPERIA ZLとXPERIA Z Ultraの2台持ちをしていたので、実を言うと、後年、HTC Oneを購入するまで、使ったことがなかったSoCでした。MNP獲得競争も激化した時代。まして、立ちはだかるはiPhone0円の世界。当然ながら、この夏モデルはMNP一括1円でばらまかれる形となり、それから10年経った今でも、HTC Oneは普通に使えます。厳密には4Gサービス、Googleのサポートは打ち切られているため、動かなくなったらそこでおしまいです。
端末によっては、Android 5.0あたりまでアップデートされたモデルもあるのですが、今となっては有象無象です。これを書いてる本人としては、11年前のSoCなのかということが一番の驚きで、最近までAndroidのサポートがあったこと(Android4.4.4は2023年8月までサポートがあったらしい)に、iOSほどOSアップデートはないけど、サポート期限は案外長いんだなと思ったりしました。
おしまい